ルイ・コスタが今シーズン限りで現役を引退することになりました。

ミランに数々の栄光をもたらしてくれた「魔法の右足」は考えてみたらほんの数シーズン前までミランでレギュラーだったわけですよね。
決して長くない間ですけど「ミランに魔法をかけた」と言われるほどの劇的な変化をもたらしてくれた選手でした。

何度リプレイで見てもディフェンスが止められないのが不思議なくらい狭いスペースを遥か遠くから狙って通すスルーパスは本当に魔法でした。
そこにまた思いもしないタイミングでパスを受けに飛び出してくるインザーギがいて、あの頃のミランはルイ・コスタの魔法が生きるチームでした。

でも、そんな魔法をもってしても、栄枯盛衰の理には勝てなかった。

ブラジルからやってきた天才的なトレクアルティスタ(イタリア語でトップ下のこと)が、わずか2試合かそこらでルイ・コスタからレギュラーを奪ってしまった。

御存知、カカがミランに現れたシーズンのことです。

ポルトガル「黄金の中盤」の司令塔として世界トップを走り続けたパサーも、カカの才能には潔く脱帽したそうです。

それ以来、ベンチに座ることが多かったルイ・コスタですが、本人もセリエAのレベルでプレーできる限界が迫っているのを感じていたのか、ベテランらしく備えることに徹していました。
たまに与えられる出場機会に、キレは無くても、相変わらず不可能を可能にするかのようなパスでミランのオフェンスに魔法をかけてくれました。

今のカカは、ドリブルは当然ですが、ラストパスを出すタイミングで高い評価を受けている背景には、ルイ・コスタとの出会いが重要な意味を持っているんじゃないかと思います。

カカにレギュラーを譲ってから、ルイ・コスタはトップ下を務める先輩としてカカの指導に多くの時間と労力を使っていたそうです。
ポルトガル人のルイ・コスタと、ブラジル人のカカは同じ母国語を持っていますし、ポジションも同じ、年は離れていてもお互いに異なる長所を持った選手で、若いカカはもちろん、ベテランのルイ・コスタ自信も多くの刺激を受け、与え合っていたんだと思います。

こんなに素晴らしい選手が、外国のチームで若手にレギュラーを奪われて大人しくそのチームのベンチに収まっていられるものでしょうか。
フィーゴのようにあっちこっちレギュラーポジションを求めて彷徨ってる選手を横目に、黙ってミランのベンチに座っているルイ・コスタは、レギュラーとしてプレーすること以上にやりがいのある物を手にしているように僕には思えました。

カカのドリブルと潜在能力、ルイ・コスタのパスセンスと経験。

この2つがミランという場所で出会って、今の世界最優秀選手としてのカカがいるんだと思います。

カカという才能に出会ってからのルイ・コスタは、カカの活気と比べて霞んで見えていたのではなく、ベテランとしてするべきプレーが何であるかを理解してそれを黙々と実行していたんだと思います。

ナンバー2になってしまったルイ・コスタは最早、若いカカの至らない部分を補填するためにいるわけで、無理に我武者羅に走り回るんじゃなく、カカのスピードとパワーで崩せなかった壁を、経験と技術でほどいていくのがカカと出会ってからのルイ・コスタが抱いていた理想だったように思います。

今になって思えばルイ・コスタがミランを去るのを遅らせていたのは、
カカに自分が教えられる全てを教えてからミランを去るつもりだったんじゃないかと思います。
カカなら上達も早いですし、サッカー人としての見本はマルディーニという世界でも他にいないんじゃないかってくらいの偉人がいますし、ルイ・コスタはトップ下として世界トップを戦う選手の心得をカカに伝授したんだと思います。

カカ自信、ルイ・コスタがいなかったら今の自分はいないと言っていますし。

こういう師弟関係は選手の出入りが比較的少ないミランだからこそですよね。
バレージとマルディーニとか、ルイ・コスタとカカとか。
ネスタもマルディーニとコスタクルタからディフェンスの手ほどきを受けたと言っていますし、今ならパトがカカから色々教わっているみたいですし。

そういえば、元ミランのレジスタであるアンチェロッティ監督が、ピルロをレジスタとして成功させた人ですよね。
カカはレオナルドとも親密みたいですし、選手以外もまたそういう関係があるんですね。

100年以上続く長いミランの歴史の中で、そういう人と人の繋がりが今のミランを作ってきたんですね。

その中で1つの時代を作ったルイ・コスタが引退するって、なんか切ないですね。
今は「カカとピルロのミラン」ですもんね。
「ルイ・コスタのミラン」はすぐそこだったのに遠い過去みたいに感じます。

あのスルーパス大好きだったのになぁ。
ピルロのロングパスと、ルイ・コスタのスルーパスは、本当に思いもしない形でフォワードの動きと結実して、予想だにしない形でディフェンスを崩してくれて、楽しいを通り越して感動の域ですよね。

廻る廻るよ時代は廻る。
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